冒険者ルーク 173
ふいに、リジルの気配が変わった。
「へぇ、もうバレたんだ。で、マスターはあたしを殺すの?」
リジルの髪が紫に染まり、瞳が赤くなった。おそらくは、これが邪神形態のリジルなのだろう。
——俺に発動していた呪いが緩和され、ジャガーノートの姿になる。
出来得るならリジルと戦いたくはないが、いつ襲撃されても良いように、黒豹の獣人の姿で居た方が対処しやすいだろう。
「殺すのが早いか遅いかだけの違いだね」
俺の手からリジルが消え失せ、彼女の右手には魔剣が握られていた。
武器を瞬間移動——いや、召喚したのか?
「待て、リジル——俺はお前と戦う気は毛頭ないぞ」
リジルは剣を一振りすると、一瞬で俺に肉薄して来た。
「ロン!」
俺は神槍ロンゴミアントを召喚する。
ガタノソアモードのリジルと、ロンとが交差。
ガキーンという金属音が辺りに響く。
驚いたな、リジルも縮地が使えるとは。
息もつかせぬリジルの連撃を、俺はどうにかロンで防ぐ。
だが、槍に慣れていない俺にとって、この戦いが不利なことは分かっていた。
槍は取り回しが難しい武器だ。
その長さは長所であり、短所でもある。
懐に入られたら、逆に槍の長さが攻撃の妨げとなるのだ。
熟練度を上げている暇はない。
ならば、俺は得意な武器を召喚する。
そう、こちらの世界にフラガラッハを召喚するのだ。
ロンには悪いが慣れない武器で戦うことは、死を意味するゆえ、俺は長年の相棒であるフラガラッハを選択する。
それに、槍は父上の専売特許でもある。
少なくとも、槍術においては父上を超える未来など想像もつかない。
「召喚、フラガラッハ!」
俺はロンを亜空間ストレージに仕舞い込み、空中に召喚の魔法陣を描いた。
俺の右の肉球から相棒が、その姿を現す。
こうして俺は、フラガラッハを召喚した。
そして、常時発動しているサイズ調整の魔法によって、長剣はジャガーノートの俺が振るっても丁度良い長さになった。
しかし、異界からフラガラッハを召喚したことで、俺の膨大な魔力はごっそりと持っていかれるのだった。




