冒険者ルーク 168
一体、ルー・フーリンは何を考えている?
今ここで共闘して、ガタノソアという脅威を排除出来るのならば、そちらの方が楽ではないのか!?
私と一緒で、彼女に愛着が湧いたとか。
いや、そういう恋愛的な感情は見受けられない。
いつ、ガタノソアがルー・フーリンに対して牙を剥くか分からないというのに、側に置くという選択肢はあり得ない。
それはまるで、喉元に刃を突きつけられながら生きるようなものだ。
王の器とか、そういうレベルではない。
これがサダルメリク——王者の幸運な星と呼ばれる存在なのか!?
それに奴が変化したジャガーノートと呼ぶ、妖魔化した獣人。それは人間界の言葉で、抵抗出来ない破壊力を持つ者という意味があった。
アザトースは敵だが、真の敵はあのケット・シーの姿をした獣人かも知れぬな。
黒猫を利用して、アザトースにぶつけるつもりだったが、それは正しい選択と言えるだろうか!?
他の旧支配者と手を結ぶ——いや、理性的な邪神はツァトゥグア以外には見当たらないな。ただ、奴も心の奥底では何を考えているか分からぬが。
いずれにせよ、アイナを守るために利用出来るものはすべて使う。
何ということだ。
この這い寄る混沌が、たかだか人間の女一人という存在に翻弄されるとは!?
だが、この感じは不快ではない。
私は永らく、アザトースの従順な部下で息子で奴隷だった。
だが、そんな人生——邪神だが——は間違いだと気づいた。
アイナが私に、この先を生きて行く光明を見出してくれた。
彼女が居れば、何も要らない。
邪神にあるまじき感情なのは分かっている。
悲劇だとしても、私には彼女を愛する以外の選択肢を見つけられない。
だから、ガタノソアが敵に回るという選択肢を減らしておきたい。
だのに、猫は彼女を改心させるという、
それが可能ならば、願ってもないが——失敗したらと思うと、猫任せには出来ない。
我ら邪神の能力は強大だ。
ガタノソアは中でも、未知の潜在能力を秘めているらしいのだが——時間と空間を操るヨグソトース並みの力を有していたら厄介だ。
今は様子見するしああるまい。
私は猫の手も借りたいほど、多忙なのだから。




