冒険者ルーク 166
『早く、彼女を排除することをお勧めする』
なぜ、リジルは幼女の姿なのか、ナイアーラトテップに訊いてみる。
『それは彼女が生まれて間もない邪神だからだろう。おそらく、善悪の区別もつかず、精神的にも肉体的にも未熟な存在なのだ』
なるほど。
俺は灰色の脳細胞で思考する。
短い間だが、リジルには結構助けられている。
それに、俺の殺害をリジルが考えたとは思わない。誰かの——アザトースの差し金であることは間違いないだろう。
今回のピンチにも、駆けつけて来てくれた。邪神にしては、優しすぎるのかも知れない。
『忠告助かった。ナイアーラトテップ——だが、リジルは処分しない!』
俺は確固たる意志を持って、這い寄る混沌にそう宣言する。
ナイアーラトテップは信じられないという顔で、俺を見た。
『バカな、命をつけ狙われている存在を側に置くというのか!?』
『リジル——いや、邪神ガタノソアだったか。ナイアーラトテップ——貴様が人間を愛することが出来たのなら、彼女にも、その可能性があるだろう。俺がリジルを改心させてみせる!』
『分かっているのか、ルー・フーリン! 獅子身中に虫を飼うつもりか!?』
いつ裏切るかも分からない不穏分子を、側に置くのはリスクが高い。
リジルが心の底から俺を殺したいと望んでいるわけじゃない。
ただ、邪神に生まれたから、俺を殺す片棒を担がされているだけだ。
まずは、リジルの本心を確かめよう。
戦うのは、それからでも遅くはない。
ただ、なるべくなら戦わないのがベストだ。
邪神に生まれたなら、邪神として生きる道しかないのか?
そんなことは、ないだろう。
誰しも自由に生きる権利がある。
どんな生き方も、本人が決めるべきだ。
リジルは偶然、俺の剣となったがこれも何かの縁だ。
彼女に、破壊より楽しいものを提供したい。
例えば、俺との冒険とか。
はてさて、リジルはどんな答えを出すだろうか?




