冒険者ルーク 163
私は敵であるはずのルー・フーリンに、助けを求めた。
膨大な魔力を持つ彼なら、アザトースと戦う時の戦力となるだろう。
魔王であり、父でもあるアザトースは下等な人類を見下している。
かつての私も、そうであった。
人間の女性——アイナに心惹かれるまでは。
短命で、未だに人類間の紛争さえ終わらせることが出来ていない下等な種。
我ら邪神にとって、人間とは奴隷であり、食料であり、滅ぼすべき対象でしかなかった。
だが、アイナと過ごす内に私の心にとてつもない変化が現れた。
その感情に名前を付けるとしたら、それは愛と呼ぶべきものだと断言出来るだろう。
彼女を独占して、これからの人生を共に歩んで行きたい。
それには、魔王アザトースが邪魔になる。
奴は永きに渡り、様々な惑星を滅ぼして来た。破壊こそが奴の存在理由なのだ。
守るべき者を手に入れた今、仇敵と思っていた彼と手を組むことさえ厭わない。
なりふり構っては、いられないのだ。
ルー・フーリンと共闘することで、アイナが守れるのならばそれで良い。
まさか、邪神の私が人を愛することになろうとは、思いもよらなかった。
切れるカードは、全部切る。
最悪、ルー・フーリンが私とアザトースとの戦いに参戦しないだけでも良い。
アザトースは強い、と言っても能力の大部分は地球の様々な場所に封印されている。
だから、叩くなら今しかない。
他の旧支配者らを味方に付け、アザトースを倒しても良い。
アイナを守るためならば、私は父でさえ手にかける覚悟がある。
一番良いのは、ルー・フーリンや他の旧支配者らと潰しあってくれることなのだがな。
それは皮算用が過ぎるというもの。
——アザトースの気まぐれで、彼女が殺されることがあってはならない。
利用出来るものは、猫でも豹でも使う。
アイナとの、これからのために私はルー・フーリンを口説くのだった。




