冒険者ルーク 162
ナイアーラトテップは戦闘中にも関わらず、俺に意外な提案をして来た。
邪神らの王、アザトースを倒すために協力を仰ぎたい、だと!?
邪神側も一枚岩ではないということか?
「個人的に、父親殺しには賛成しかねるな」
と、俺。
俺にとって父上は、神にも等しい——いや、神以上の存在だ。
ナイアーラトテップは、実の父を殺したいという——俺には、考えられぬ話だ。
「世の中の親子関係は、君よりも良好ではないのさ。利用価値がなくなった子を、処分したいと思う父親だって居るものだよ」
何て歪んだ親子関係なんだ!?
邪神の思考形態は独特だと、思ってはいたがこれほどまでとはな。
「——対立する動機は何だ? いきなり、俺に共闘を持ち掛ける理由を知りたい!?」
ナイアーラトテップがアザトースに歯向かうメリットがあるだろうか?
何かが、彼ら邪神の中で起きたに違いない。
俺の、灰色の脳細胞はそう告げていた。
思考している間に、またエンキドゥが襲って来た。
俺は容赦なく、斬撃を飛ばし、巨猿の胴体を真っ二つにする。
再生速度が落ちて来ている。
エンキドゥのバラバラ死体をダンジョンが吸い込んで、再生するには消化スピードが追いつかないようだ。
悪魔ベルベルも疲れ切った顔をしている。
俺との戦闘の上に、ナイアーラトテップというイレギュラーな存在を警戒しなければならず、精神的にも肉体的にも疲弊しているように感じられる。
「そうだね。いきなり敵対していた私が共闘を持ち掛けたら怪しむだろうね。実は最近、人間の女を妻として娶ったのだ。彼女の存在を快く思っていない父は、気まぐれに彼女を殺すかも知れない。彼女を守るために、君の力を借りたいと思っているが、どうだろう?」
ニャン、だと!?
人間の女を妻にした、と!
それは許されざる恋なのか!?
それとも、これはナイアーラトテップが仕掛けた精神的なトラップなのか!?
分からない。
前世、アーサー王だった頃は少しは恋愛の話もあったが結局は浮気され、捨てられてしまった俺には、ほぼそういう経験は皆無なので、判断材料がなさすぎる。
それに邪神が人間の女を伴侶に迎えて、殺されるというのがすでに理解不能だ。
魔王アザトースとやらの情報もない。
邪神たちの王で、ナイアーラトテップの父親らしいがそれ以外は謎だ。
あまりにも、情報量が少ない。
早く、エンキドゥを倒して、詳しくナイアーラトテップの話を聞く必要があるだろう。




