冒険者ルーク 161
「苦戦しているようだな。手を貸そうか?」
俺の頭上から声がした。
声の主は、這い寄る混沌——ナイアーラトテップだった。
白銀の長髪に、人間界のおそらくはブランド物と思われるスーツ。
「ナイアーラトテップ卿か。今日はまた、何の用だ!?」
俺はエンキドゥを斬り刻みながら、横を飛ぶナイアーラトテップに言った。
殺気は感じない。
突如現れた闖入者に巨猿は驚いたが、敵と認識したナイアーラトテップ氏へとターゲットを変えた。阿修羅の剛腕が、這い寄る混沌へと炸裂——する前に、彼の髪が死神の鎌と化し、幾つもの裂傷を作る。
切断には至っていない。
やはり、硬質化した肌は厄介だな。
猿はさらに、激昂し雄叫びを上げる。
そんなエンキドゥに構わず、這い寄る混沌氏は俺に話しかけて来る。
「しばらく見ない間に、可愛らしい姿になったものだな」
「これは、俺の第一形態に過ぎない。貴様とて、色んな姿になることが出来るのではないか!?」
当てずっぽうだが、あながち間違いではなかろう。奴からは色んな気を感じる。
「クク、ご名答だ。私はサウザンド・フェイス——千の貌を持つ者として、邪神の中では知られている」
「そんな秘密を、敵である俺にバラして良いのか? 貴様の不利になるだろう!?」
「生憎、事情が変わって来てね。そこで相談だ。ルー・フーリン——私の父、魔王アザトースを倒すために協力を仰ぎたい!」
ニャンだと!?
こいつ、今、実の父を倒すと言ったのか!?




