冒険者ルーク 155
上半身と下半身が真っ二つにされた、アスラエイプことモン吉の死体の前で号泣するベルベル。
「モン吉、嘘よ。死なないで!」
その姿を見て、多少の罪悪感は感じるが向こうが殺す気で来ているのに反撃しないという話はないだろう。
アスラエイプを倒してダンジョンクリアという話なら、楽だったんだけどなぁ。
ラスボスは、悪魔ベルベルということになるのか?
あまり、強そうには見えないし、女、子供と戦うのは苦手なんだけどな。
そんな物思いにふけっていると、ベルベルが涙を拭い、こちらをにらみつけて来た。
「よくも、アタシのかわいいモン吉を殺してくれたわね」
「不可抗力だ。お前は俺を殺そうとし、その修羅猿を差し向けた。俺は、ただ単に自衛したに過ぎん」
しかも、今回は呪いの発動で手加減が出来なかった。
リジルが来なければ、今もジリ貧だったろう。
「うるさい! うるさい! このベルベル様に歯向かうなんてナマイキよ。ふう、良いわ。モン吉は気に入っていたけど、そろそろ新しいペットが欲しかったのよね。モンスターが居なければ、作れば良いじゃない!」
普通、お気に入りのペットを暗殺には使わないはずなのだがな。
今、モンスターを作ると言ったのか!?
そんなことが可能なら、ベルベルの脅威度を少し上げなければならぬな。
ふと、ベルベルの眼前に赤く大きな魔法陣が現れた。
どうもそれは、アスラエイプの死体を媒体に使用しているようだ。
巨大な魔法陣の中に次々と、ゴブリンやオークにオーガが転移し、それらはやがて一体の魔獣となった。
『アタシのとっておき、融合魔獣エンキドゥよ。さあ、アタシのかわいい僕、このエルフを八つ裂きにしておやり!」
ワオワオワオ。
ベルベルが作ったダンジョンボスは、アスラエイプに鬼の角と剣歯が生えた、体長八メートル級の魔獣だった。体毛は緑と赤のマダラで、尾は大蛇となっていた。
身体にはゴブリンやオーガの素材がふんだんに使われているようだ。
妖怪のヌエの要素もあるな。
一種のキメラと言えるかも知れない。
これは、俺もジャガーノートの姿になって、応戦しなければヤバいか?




