冒険者ルーク 148
泥だらけではないのに、走馬灯を見たような気分だ。
奴に殴られて、意識が飛んでいたようだ。
ふと、麻痺の効果がなくなったのを確認した俺は、回復魔法を常時発動状態にした。
痛みは避けられないが、深手を負うこともなかろう。
クソ、ここにリジル——いや、フラガラッハがあれば。
こんな障害など、斬り裂いてくれようものを。
前方には、アスラエイプ。
後方には、いつのまにかオーガの群れ。
ざっと、五十体は居る。
どうやら、修羅猿には服従か何かのスキルがあるようだ。
ふと、オーガの後方がザワザワし始め、モーセの十戒が如く、鬼の集団が二つに割れた。
俺はそこで、居るはずのない人物を見た。
リジルだ。
間違いない。
こんなダンジョンに、場違いな赤髪緑眼の幼女。
「来ちゃった。へへ、リジルが居ないと困るでしょ?」
まさか、俺の危機を感じ取って、こんなとこまで。
リジル、出来る子や。
ロンには悪いが現状を変えられるのは、リジルしかいない。
リジルしか勝たん。
気の所為か、オーガの群れはリジルに恐れ慄いているように見える。
俺はロンを武器ストレージに仕舞い、新たにリジルを装備した。




