冒険者ルーク 143
「バカな……魔道士三百人分の魔力を込めた、わらわ渾身の一撃を止めるだと!?」
ロスアルザの顔が驚愕に彩られる。
しかも、トライデントの穂先は俺の右人差し指一本で無力化している。
いわゆる、指先一つでダウンな状態だ。
観客がざわついている。
何せ、ロリババアの最上級と思われる一撃を指一本で防いだのだから。
ロスアルザ殿の魔法が猫に負けた、だの——王子殿下の防御魔法が素晴らしいだの、ギャラリーがうるさい。
変化の魔女は、ぐぬぬ顔だ。
「くっ、猫のクセに防御魔法に長けているとは。次は本気で行く!」
いや、アンタ——俺、殺す気で魔法放ったよね?
ロスアルザは妖精魔法が失敗したので、即座に精霊魔法に切り替えた。
ここら辺の判断力は、さすがに年の功——おっと、ロスアルザににらまれた。勘の良いババアは嫌いだよ。
魔女ロスアルザは、風の精霊エアリアルを召喚した。
エアリアルは巨乳に美人さん、だった。
逆に、ロスアルザは貧乳で、つるぺたで、絶壁であった。
使い魔に負けてるぞ?
一瞬、物凄い形相でエアリアルの谷間をガン見したロスアルザだったが、戦闘中なのを思い出して、俺を射殺せそうな視線を向けて来た。
顔には、よくも恥をかかせたなという思いが見てとれた。
俺の所為ちゃうやん!
おっと、なぜか関西弁が出てしまった。
人間界の語学は、ほぼマスター済みだ。
なぜだか、ツッコミを入れる時にネイティブな関西弁が発動してしまう。
ううむ、不思議のアッコちゃんだ。
——ふいに、エアリアルの眼前に小さな竜巻が現れる。
「喰らうが良い、猫。サウザンド・エアリアル!」
おお、技名かっこいいな。
ロスアルザ版、千刃と言ったところか。
だけど、俺も風の精霊を無詠唱で召喚してたんだよな。
結果から言うと、ロスアルザの千刃は散らされた。
俺が召喚した風の精霊王シルフィードによって。
そりゃあ、召喚した精霊の格が違いすぎて無効化されるよな。
エアリアルも精霊王に敵対する意志はないのか、早々に引っ込んでしまった。
ざまぁ、ザマス!




