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冒険者ルーク 138

 ふう、バカの相手はしんどいな。

 こんな見識の狭い奴らが多いから、父上は引退出来ずにいる。

 父上とて、代わりにティル・ナ・ノーグの統治を任せられる人材が居るのなら、苦悩はしない。

 俺だからこそ、この妖精界を任せられると父上は仰った。

 正直、ティル・ナ・ノーグのことなんて、どうでも良い。

 ただ、息子として父上の期待には応えたい。


「猫如きに、この広大な妖精界全土を統治出来るものか。その上、ドラゴンなどの魔獣種の長らが、クー・フーリン陛下以外の支配は納得すまい——」


 確かにな。

 ドラゴンやグリフォンに一目置かれる父上が統治しているからこそ、不満が噴出していないのかも知れない。

 ふいに、玉座に座っていた父上が片手を上げ、皆を制した。


「——皆の言い分は良く分かった。その上で、私は息子のルー・フーリンがティル・ナ・ノーグの支配者であるに相応しいと思う」


 えー、何、この父上の根拠のない自信。

 だって、俺、猫ですよ。

 猫の額ほどの土地なら、統治するのは簡単だけど——さすがに、ティル・ナ・ノーグ全土ってのは、ハードルが高いっしょ。


「確かに、猫の呪いはある。が、それは妖精界の支配に何ら影響するものではない。それに、今、集まってもらっているエルフの部族長ら全員の戦闘力を持ってしても、我が息子ルー・フーリンには太刀打ち出来ないだろう」


 おっと、父上から爆弾発言が飛び出した。

 でも、それは事実だ。

 単純に戦闘力も魔力も、はるかに俺は彼らの先にいる。

 それだけが妖精王たる資格ではないのだが、最低ラインはとっくの昔に超えている。俺がエルフの部族長らに遠慮して、本気を出していないだけで。

 奴らのプライドチキンなど知ったことではないが、和を重んじる父上の手前、知らずに俺は実力をセーブさせてしまっていた。

 まぁ、父上には見抜かれていたようだが。

 小さな頃から、帝王学を始めとする英才教育を施されたこの俺だ。

 やってやれないことはない——が、父上を飛び越して、何かしようという気はない。

 このまま、王子という身分であるだけで良いのにな。

 それに、父上以外の誰かがティル・ナ・ノーグを統治するという未来が見えぬのだよ、まったく。












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