冒険者ルーク 129
階層を降りるに従って、微妙な変化が現れた。ゴブリンたちが武装するようになったのだ。おそらくは、死んだ冒険者から手に入れた剣や鎧などを身につけているのだろう。
メイジやアーチャーなどの支援組も、ちらほら見られるようになった。
だが、所詮はゴブリン——槍の一振りで、三体を瞬殺。後方から迫る個体には、引き戻した槍の石突で顔面粉砕——痛そうだ。だが、同情はしないし、金もやらない。
奴らは繁殖のために、人間の女を苗床に使う。普段の行いを考えれば、因果応報であろう。
五階層の奥には、ボス部屋があった。
全長五メートルのゴブリンキング——俺は奴の脳天目掛け、ロンを投擲する。
ロンゴミアントは頭部を豆腐のように粉砕し、俺の手元に戻る。
神槍には戻る機能がないので、またもや俺の魔法で引き寄せている。
父上の魔槍ゲイ・ボルグには、手元に戻る機能が標準でついている。だが、ロンにはそれを上回る破壊力がある。攻撃力か便利さかという話だ。
ぶっちゃけ、ゲイ・ボルグの方がお役立ちだが、ロンが拗ねるので口にはしない。
それが、思いやりだ。
槍だけに。
そうそう、切先にはクリーンの魔法を掛けているので斬れ味は鈍らないはずだ。
ロンでさえも、ゴブリンを倒すのには難色を示す。武器にさえ嫌がられる、ゴブリンの不潔さが分かるというものだ。
お次は、豚面の魔物オークだ。
体長はニメートル程度だが、筋力はゴブリンの数倍はある。
使用武器は斧や棍棒がメインか。
俺は流れ作業で、豚どもを屠って行く。
屠る側から、亜空間ストレージの魔法陣が発動し、死体を収納して行く。
今日の夕飯は、しょうが焼きにでもするかな。見た目はともかく、味は絶品のブリン、ブリンなのだ。
いや、しかしオークの数、多くね?
シャレではない。
交戦してから、すでに五百体以上倒している。異様なまでの遭遇率——これは、ダンジョンの管理者が誘導していると見て良いだろう。
悪魔ベルベルか。
一体、どんな奴だろうな。
「くしゅん!」
そう、ダンジョンの奥でかわいいくしゃみをもらしたのは、ミントグリーンの髪をツインテールにした、少女の姿の悪魔ベルベルだった。




