冒険者ルーク 126
俺は霧の中をさまよっていた。
行けども行けども、白い霧の中——
ミストか。
濁点をつければ、某ドーナツ屋の略称になるな。
おまけにバーンをつけたなら、竜王退治の謎の敵になるという。
さらに、人間界の映画では邪神の群勢に囲まれた親子が車内で一悶着ある話もあったな。
話が逸れた。
——その白い闇にも似た霧が晴れた途端、俺は様々な武器に刺し貫かれていた。
剣に槍に斧に鎌に——およそ強力と思われる神話級の武器たちが、俺に刺さっている。何なら、槍は身体を貫通しているし、剣身は半ば埋まったままだ。
俺は絶叫を上げ、目が覚めた。
夢オチかよ!
この話をロンにすると、奴はそれは逆夢で逆に良いことが起きる暗示だと言った。
それに、一定の条件をクリアした聖剣などは猫がマタタビに引き寄せられるように、俺に吸い寄せられるらしい。
ニャンてこった!
まさか、俺自身が猫ではなくマタタビだったとは。
そんか危険なアプローチは要らない。
いっそ、不吉で縁起が良いのか?
それは、十二ある国の仁獣の黒いキリンの話だけで良い。
——とりあえず、俺は冒険者ギルドで勧められた初心者向けのベルベル・ダンジョンに、ロンことロンゴミアントの二人で自然発生型のダンジョンの出入口前まで来ていた。
今回、リジルは留守番だ。
長い間、放置していたロンに穴埋めのため、俺は二人きり?の時間を設けた。
いささか、ロンではオーバーキル過ぎるがまずは奴の鬱憤を晴らしてやらねばなるまい。
このダンジョンは、悪魔ベルベルの管理するダンジョンのようだ。
攻略されずに生き残っているとは、中々優秀な奴か——それとも、臆病な悪魔なのか。
魔神ガイナゾーンの臣下としての、真価が問われるのか。
進化したダンジョンと相対することになるのか。
心底、どうでも良い。
今回は、男女しか入れないダンジョンではなかったようだ。
おっと、クエストが迷宮入りする前にダンジョンに入らなくてはな。




