冒険者ルーク 118
別段、子供が好きでラルクたちを助けたわけじゃない。
父上なら、見過ごさない。
我が父は慈愛に満ちているからな。
残酷な天使も存在するが、父上の前世は天使ではないかと疑ってしまう時がある。
とにかく、器がでかい。
命を狙う相手にも慈悲を掛け、妖精族の内乱で孤児となってしまった者たちに教育を与え、城で雇っていたりする。
救える命があるのなら、可能な限り救おうとするのが父上という人物である——ま、人ではなくハイエルフなのだけどね。
俺は唯一の肉親である父上以外のことは、割とどうでも良い。
だが、目の前で子供が飢えていたり、虐待されている現実にはガマンがならない。
優しいという感情ではない。
イヤな気持ちになるから、それを正すだけだ。ついでに、父上に撫でられるという打算も少なからずある。
というか、大いにある。
人間界の有名な美術家ゴッホには、彼を支援してくれるテオという弟が居た。
テオは兄ゴッホが亡くなった、すぐ後に死んでいる。
彼の生涯は、ゴッホのためだけにあった。
そう、俺は父上にとってのテオで良い。
父上のためだけに生き、父上のためだけに死す。
それが俺の、望みだ。
決して、ひかりやこだまではない。
おっと、新幹線の話ではなかったな。




