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妖魔の森の赤帽子 8

 

 バトルアックスの強烈な一撃が、ルー・フーリンのフラガラッハをはじき飛ばす。黒猫の愛剣は放物線を描いて、大地に突き刺さる。


(しまった!)


 ニヤリとグフが笑う。


「オメーも中々、善戦したが、このグフ様の敵じゃねぇ。オラを相手にここまで戦えたヤツは初めてだ。苦しまずに殺してやっから、心配すんねい!」


(父上、お許し下さい。ピアスを一つはずします!)


 黒猫がぶつぶつと何かを唱える。


「懺悔なら、アノ世でやりやがれっ!」


 グフが渾身の一撃を黒猫の首元に叩き込む!

 刹那――爆風がレッドキャップを襲い、大樹へと吹き飛ばされた。受け身も取れず、グフは樹に叩きつけられる。


「ぐはっ! こいつ、妖術を使いやがった!」


 妖気の波動が辺りに拡散する。


「違うな。封印を解いたんだ。お前があまりにも強い戦士なので、俺本来の能力を使わねば勝てぬと思ったのでな」


 そう、ルー・フーリンの三つのピアスは伊達ではない。すべてが封印のピアスなのだ。

 生まれてから、この方――黒猫王子は、自らの強大すぎる能力を封印してきた。リングピアスには制御を促す魔法がかけられてあり、ルーを常に守っている。

 今回のことは、多少賭けであった。

 妖力と魔力を制御する器が、ルー自身に育っていなかったら、暴走し、妖魔化するリスクがあった。

 賭けに勝った黒猫は、さらなる能力を手に入れた。グフを屈服させるための手段だった。

 一つ目の封印を解いた黒猫は、次の封印をいつ解放する時が来るのだろうと思いを馳せた。

 ルーは愛剣を大地から拾う。

 一方、あまり褒められたことのないグフは、顔を赤くしていた。


「オラが、強い戦士だと!?」


「ああ、お前は強い。そこで、俺はお前を妖精騎士団にスカウトしたいのだがな」


 意外な申し出に、グフは戸惑う。

 グフはレッドキャップでない方の、一族のつまはじき者だった。

 仲間が欲しくとも、彼は常に一人だった。

 今は、斧リサがいる。

 グフの保護者で、姉のような存在で、家族だ。

 本当の家族は、一人は病気で亡くなり、もう一人は魔界から現れた悪魔に殺された。

 その憎しみと悲しみとが、グフをレッドキャップに変えた。

 そのグフを妖精騎士団に迎えたいという――


「しっかりしな、グフ様! 今は戦闘中だよ。まったく、おだてに弱いんだから!」


 そこへ、斧リサの一喝が飛ぶ。

 そうだ。今は戦ってる最中で、敵が仕掛けた士官という誘惑かも知れない。

 レッドキャップは、かぶりを振る。


「そんな、スカートなんて知らねぇ。オラは気ままなレッドキャップだ!」


「そうか。残念だ。では、決着を着けようか、レッドキャップのグフ!」















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