冒険者ルーク 108
人体で構成された魔法陣が、一際強く輝く。
それは、芹奈芽留のクラスメイトで作られた物だった。
人間界へのプロテクトを突破し、現れ出たのは、王冠を被った漆黒の長髪と美髯を持つ悪魔であった。背中には鷲の両翼があり、ガイコツでできた戦車に乗っていた。
「ん、ん、ん——久しぶりの人間界。召喚に使われた生け贄の質が悪すぎますな」
大悪魔ベリアルの召喚には、かろうじて成功した。
が、ベリアルは召喚された環境に満足していない。
今回、大悪魔を喚び出したのは、魔女エレノアである。
——優れた生け贄の条件の一つは、魂の質だ。その魂が邪悪であればあるほど、悪魔の召喚は容易くなる。
が、質の悪い魂で召喚された悪魔は不愉快さを感じ、契約を破棄してしまうこともある。
昔の人間の邪悪さは、ベリアルにとって良質な果実のような物だった。
呪った相手を殺したい、苦しめたい。それも最も残酷な形で。
今では、いじめという質の悪い行為を行う人間がほとんどだ。
質の悪い魂では、悪魔が力を得ることは出来ない。
ゆえに、苛立った悪魔は召喚した魔女の首を握りつぶし、流れ出る鮮血を飲み、気を沈めた。
「ん、ん、ん——無価値な人間どもを集めても、価値ある魔法を行使するには至らないようですね」




