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冒険者ルーク 107
気づいたら、霧の中だった。
芹奈芽留は行けども行けども晴れぬ霧の中を、さまよい歩いていた。
ふいに、永劫に続くかと思われた霧が晴れた。
次第に周りの状況が見えてくる。
目の前には、巨大な魔法陣があった——
が、それは普通の五芒星の魔法陣ではなかった。肌色と赤色が織りなす、奇怪なタペストリーであった。そう、それは人体と血液で構成されたものだった。
「ひっ!」
我知らず、芽留は悲鳴を上げた。
いかなる犯罪者が、このような猟奇的で魔術的な殺害現場を作り上げたのか。
——闇の中から現れたように、五芒星の魔法陣を、五人の魔女が取り囲んでいた。
彼女らは、悪魔を召喚する呪文を唱えていた。
『グリモワール・レメゲトン・アートアルマデル・サバオト・アドナイ。大悪魔ベリアルよ、来たれ!』
それは魔界において、無価値な者を意味する名前であった。




