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冒険者ルーク 102
クリフォト——モロクの乱入したサバトの会場は、負傷した魔女や斬り裂かれた下級悪魔らの死体が散乱としており、混沌を形成していた。
にも関わらず、残った者どもは酒を喰らい、踊り、時には決闘をし、時には淫らな行為に溺れた。
一部始終を静観していた魔女の王・メルゼリアはサバトで失った魔女らを補充しなくてはならないと感じていた。
彼女の側には、使い魔にしてペットの魔犬ティンダロスが控えている。見た目は、獰猛なドーベルマンに似ているが、体毛と双眸には赤い魔法陣のタトゥーが彫られていた。種族的には、ヘルハウンドという地獄の猟犬だが、この魔獣は人間界の犬を生け贄に召喚され、特殊な魔法で飼い犬だった個体の魂を融合させた魔界獣であった。
消滅して行く同胞を見て、メルゼリアはかつて人間だった時のことを思い出していた。




