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冒険者ルーク 100
妖精が使う治癒魔法では、最上級になる呪文だ。効能は内臓破裂から四肢欠損まで、何でも治す。しかし、この魔法には膨大な魔力が必要で、俺だからこそ行使出来るのだ。
「……あれ、痛く——ない?」
ラルクの服は血が滲んでいたが、俺がクリーンの魔法で綺麗にしておいた。
「お前は運が良い。俺が通りがからなければ、内臓破裂で死んでいただろう」
よし。子供の生命を救えた。このことを父上が知ったら、モフモフしてくれるに違いない。
そういう打算で、ラルクを救けたわけではないが、父上に褒められるくらいのメリットはあって良いだろう。
ラルク少年は、俺に見惚れている。エルフが珍しいのか。
ふと、我に返ったラルクが俺に礼を言う。
「——救けてくれて、ありがとう」
「お前を死なせたら、夢見が悪いと思ったまでさ。ところで、なぜ、リンゴを盗んだんだ?」
俺は本題を切り出した。
ラルクは一瞬、ためらったが重い口を開いた。
「お願い! 何でもするから、妹を——シエルを救けて!」




