冒険者ルーク 98
左手首から、ぼとぼとと血を流すモロク。
口から火炎を吐いて、傷口を焼いて出血を止める。
バフォメットは右手の爪に魔力を集中させ、レオナールの能力であるラスティ・ネイルを発動した。
「ラスティ・ネイル——ゾア・フレイム」
大抵の生物は火に弱い。
だが、モロクは火炎を操る魔神だった。
邪神の炎の爪撃がモロクの左腕にかすり、白い炎が立ち昇る。
「火炎魔神に炎の攻撃を仕掛けるとは、笑わせる」
だが、消えぬ。
火炎に耐性を持つモロクであっても、邪神が作り出す炎を消すことは出来なかった。
徐々に炭化して行く左腕を、モロクは鎌で斬り飛ばし、攻撃を凌いだ。
「バカな、この火炎——どう、なっている!?」
炎を無効化する耐性があるにも関わらず、バフォメットの炎爪はそれらを無視して燃え続けた。
「この程度の攻撃を凌いだだけで驚愕するとはな。貴様はどうやら、格下の魔神だったようだな」
ニヤリと笑うバフォメット。
次に瞬間移動をした黒山羊の邪神の手には、モロクの脈打つ心臓が握られていた。
「ゴフッ!」
大量の血を吐いて、倒れ伏すモロク。そのままバフォメットは心臓を貪り食い、モロクの魔力を自身に吸収した。
戦闘に負けた悪魔の能力や魔力は、倒した相手に引き継がれるシステムが存在した。能力獲得はランダムだが、悪魔が自身を強化する手っ取り早い方法は、同族を手にかけることであった。




