冒険者ルーク 83
ケンプを自宅に送り届け、俺とアレッキオは次なる依頼主の元へと出向いた。
武器屋エッケザックス——そこは木造だが、しっかりとした作りの店だった。
店主は、ラズロ・イーヴァルディというらしい。
間違いない。
ドワーフの店だ。
俺の世界にも、イーヴァルディを姓に持つドワーフが居た。確か、名工の家系だ。
我が師、ゴブニュなら、その辺の事情は詳しいだろうか。
俺の愛剣フラガラッハは、ゴブニュ様が作った。
師の話によると、フラガラッハには聖遺物が含まれているらしい。
聖遺物は、神の骨や聖者の身体の一部などがそうだ。
これがドラゴンの牙や精霊になると、魔剣や聖剣——または、インテリジェンス・ウエポンとなる。
神の骨で創られた剣は、神さえも殺害することが可能だ。試したことはないが、ゴブニュ様の話が真実ならば、その通りなのだろう。
取り止めもないことを考えていると、背の低い白髪のドワーフが現れ、裏庭に通された。
年齢は三百二十歳と、鑑定では出た。
「——二人で、どうにか出来るほどのサイズじゃねぇぞ。身体強化の能力持ちなのか?」
ラズロが訊いた。
なるほど、概算で縦八メートル、横五メートルはあるな。
俺もアレッキオも細身なので、心配しているのだろう。
「あー、こりゃ無理だな」
と、俺。
「——だろうな、お疲れさん」
特に期待もしていなかったのだろう、ラズロは手をひらひらさせて、帰れとジェスチャーをする。
「ちょっとデカいから、細かくするわ」
「何を言って——」
俺はリジルをニ閃し、巨石を四等分にして、ストレージに仕舞い込む。
あれほど、存在感のあった巨石は跡形もなく消失した。
アレッキオとラズロは、驚きのあまり固まっている。
「依頼完了ってことで良いかな」
こうして、俺はまた一つ塩漬け依頼をこなしたのだった。




