冒険者ルーク 70
這い寄る混沌こと、ナイアーラトテップはスタンピード前の死骸をすべて回収していた。トラペゾヘドロンにはシュブ=ニグラトの核がある。そこへゴブリンの残骸を詰め込み、新たな邪神を誕生させようとしていた。
普段は魔王アザトースの僕の彼だが、そろそろ自身の手足となる存在が必要な時期に差し掛かっていた。
強力な邪神を創るには相応の材料が要る。
「これでは足りぬな。新たに封印されている邪神を、手に入れて来るか。確か地球には、ゴル=ゴロスが眠っていたな」
ナイアーラトテップは漆黒のヒキガエルの邪神を思い浮かべた。この邪神は珍しく、人間と共生したがっていたが、彼の食性上、それは無理だった。
ゴル=ゴロスの食事は人間だった。しかも、彼は生き餌しか食べない。
人間界を滅ぼしかねない大食漢のヒキガエルは、テスカポリトカを始めとする神々によって、マヤ文明の古代遺跡の地下に幽閉された。
実は、超古代文明であるアトランティス、レムリア、ムーなどは邪神の封印を失敗して滅ぼされたのだった!
そして、ゼウスやオーディンやアマテラスと言った神々は、天使たちが変貌した姿だった。
天使が神へと至る道は狭き門である。
——天使の羽根には、世界を改変する能力が内包されているが、その権能を使いこなすには、様々なプロテクトを解除しなければならない。
世界に干渉する術を得た天使は、神として覚醒して行く。
しかし、プロテクトの解除は困難であり、限定的な能力を持つ神格がほとんどであった。
あるいは、ゼウスのように雷撃の能力に特化した進化を遂げる者が居たり、威力は弱いながらも多種多様な能力を獲得したりする者もあった。
悪魔が後天的に目覚めるユニークスキルであるギフトも、神へと至れなかった堕天使の能力が歪に進化したものであった。




