冒険者ルーク 69
——やり過ぎてしまった、かも知れない。
何しろ、スタンピードを一人で解決した者など、レグルスの長いギルド人生においても皆無らしいのだ。
報奨金は概算で、一千万ゼニス!
人間界では、一千万円となる。
冒険者ランクを上げるのに、後は街の雑用と、要人の護衛がある。
これらのクエストを遂行することで、俺はきちんとした実績を残し、ランクを正々堂々上げることができる。
それまで、C級は保留だ。
持ち込んだ薬草類だが一年分ではなく、三年分はあった。在庫と照会して、薬師ギルドに少し、色をつけて納入することになった。何しろ、ドライアドの魔法で保存状態が極めて良いからだった。
ドライアド美女軍団が居る森に、お礼に向かうと、奇妙なことが起きていた。
——あれだけあった大量のゴブリンの死体は、ドライアドの能力で地中に埋められていたのだが、その痕跡がすべて無くなっていた!
そう、キングやジェネラルなどの死体もすべてだ。
地中を住処とする巨大なミミズの外見のモンスター、ワームの仕業ではないかと疑われたが、犯人は証拠を残していた。
見慣れぬ蛇の体にタコの吸盤を持つ、異形の生物がゴブリンズを集団で咀嚼していたのだ。
俺は索敵の魔法で、敵の正体を知る——
この残滓は——邪神ナイアーラトテップのものだ!
這い寄るコットン——違った。混沌だ。
これは、奴の食事なのか!?
それとも、魔術的な儀式のための生贄か!
あるいは、他の邪神を解放する下準備なのかも知れない。
今までの俺は、能力をセーブする側だった。
しかし、邪神らの出現で、俺はさらなるパワーアップをしなければならなくなった。
正確な邪神の数も生態も、思考パターンすら未知の相手だ。
警戒しすぎるに、越したことはないだろう。
ナイアーラトテップは、シュブ=ニグラトの核の回収にトラペゾヘドロンという、未知のテクノロジーの物質を使った。
宇宙には、まだまだ暗黒物質と呼ばれる謎の金属らが存在する。
転移とストレージを可能にする、宇宙のダークマター。
未知なる敵が、不可思議な邪神がなぜ、この世界に介入してくるのだろうか?
この時の俺は、知らなかった——トラペゾヘドロンは邪神の孵化を促す装置でも、あったということを——




