冒険者ルーク 61
俺は手近の洞窟に飛び込み、ウィル・オ・ウィスプの魔法を使う。通常のライトの魔法は辺りを照らすだけだが、この魔法は俺の周囲を邪魔せぬように照らしてくれる。
洞窟内は岩石を削った造りで、入り口はゆうに大人二十名ほどが通れる、かなりの大きさだった。
侵入に気づいた七体のゴブリンが手に手に得物を持ち、下卑た笑いで会話をしながら、近づいて来る。
ゴブリンたちは俺が男か女か判別できないようだ。
俺には奴らの会話が、グギャグギャ言ってるようにしか聴こえない。
が、翻訳の魔法で会話の内容が理解できた。
あの美しさで、女でないとは残念だ。
とか。
バカ、逆にあの美しさなら、男でもイケるだろ。
とか。
穴があれば、何でもイイ。
とか。
不穏な会話が聴こえて来る。
俺は思わず、お尻がむず痒くなった!
瞬時にリジルを抜き放ち、ゴブリンの七体の喉を斬り裂き、沈黙させる。
討伐証明を思い出し、ついでに左耳も刈り取る。
魔石は身体から取り出す魔法を、ドライアドらに伝授していたので、彼女らにやってもらおう。
さらに奥から、ゴブリンの気配がするので、俺は駆け出して、奴らが視界に入る度に、首を斬り捨てて行った。
左耳を斬るのが面倒になって来たので、俺は手刀に風魔法を使い、エアカッターを発動しながら、斬り飛ばして行った。
さらに次の巣へ行くと、こちらは狭かったので、乱戦となった。
ゴブリンの顔面をリジルが貫き、抜き放ちながら襲いかかる個体の首を切り飛ばす。ついでに別のゴブリンの胴体を一文字斬りに。次いで、袈裟斬りを見舞った反動で後方の小鬼の眼球を貫く。
流水の如く、淀みなくリジルはゴブリンの死骸を量産して行った。
さすがに五百体を超えると、リジルの剣身に欠けが見られた。
どうする、リジルの負担が大きい。
新たに剣を錬成すべきか?
〈大丈夫、マスター。リジルに呪いを掛けて——〉
確かに、呪いによってリジルを強化するのは可能だ。魔物を斬り殺す度に、斬れ味が増す呪いがそれだ。だが、その呪いはリジル自身を滅ぼす諸刃の剣でもあった。




