妖魔の森の赤帽子 3
「人間の女を守れ、だと!? では、父上はこの事態を予期していたというのかっ!?」
ケスリーに詰め寄るが、彼女は所詮、連絡要員である。わからないという風に、馬首を横に振る。
ルーは再び、京子をねめ回す。
「う。そんなに見ないでよ」
ジロジロと見られて、京子は恥ずかしいやら、ムカつくやらで、お腹の中がモヤモヤするのだった。
(それにしても守れ、だけとは!? 誰から? 何から守ったら良いのだ? この女がまさか、妖魔を呼び寄せるフェロモンでも発していると言うのかっ!?)
考えれば考えるほど、思考の迷路にハマる黒猫。さすがの灰色の脳細胞もお手上げ状態だ。
「どうやら、お前は妖精界の重要人物の生まれ変わりらしいな。でなくば、父上が直々に守れなぞとは、おっしゃらないだろうからな」
黒猫がいつのまにか京子を、お前呼びしている。トラブルメーカーである人間の女に対して、遠慮する必要はないと判断したのだろう。
「あたしは、お前じゃなくて京子よ! 聖城学園高等部二年三組、藤原京子よ!」
「そうか。では、京子よ。君も妖精界に来てもらう! 父上直々に守れ、との命令もあることだしな」
「さっきから、父上、父上って、アンタって、ひょっとしてファザコン!?」
図星を指された黒猫は、途端に顔が赤くなる。
してやったり、と京子はガッツポーズを取る。偉そうなルーを凹ましたかったのだ。
だが、次の瞬間――
「ファザコンだが、何か!!」
どうやら、黒猫王子は開き直ったらしい。




