冒険者ルーク 56
ネルアの森——
初心者冒険者が、手始めに薬草採取をする森に、俺は早朝から来ていた。体感的に六時くらいか。
傷を負った冒険者が即世話になるのが、回復ポーションだ。
原料のエルファ草は薬草として、とても優秀で繁殖力も強いので、多少取りすぎても大丈夫だ。
しかし、しかしだ。
この俺は、超がつくほどの面倒くさがりだ。
マサオだ。
そこで、俺は正々堂々ズルをすることにした。
俺の思考パターンは、こうだ。
現地の草花の精霊喚び出して、手伝ってもらったら、楽じゃね?
不労所得的に、俺の召喚魔法を使えるはず。
「この地に宿る、草花の精霊よ。妖精界の王子が命ずる。この喚びかけに応えよ」
俺は地面に簡易魔法陣を描く。
すると、そこから一人の成人女性姿の精霊が現れた。
緑色の髪に、金のシャギーが入った瞳がサファイアの美女だ。ゆったりとした全身ボタニカルな衣装に身を包んでいる。
「草花の精・スプライトよ。王子様、用事は何かしら?」
気だるそうにいう精霊。
元来、精霊や妖精は物事への関心が薄い。が、俺には秘策があった。
「薬草を集める手助けをして欲しい。多ければ多いほど助かる」
美貌のエルフと恋仲にと言われたら、どうしようと考えていた俺だったが、それは杞憂に終わった。
「報酬次第ね。あたしたち精霊にとってメリットのあることじゃないと、誰も動いてくれないわよ」
「分かっている。そうだな、名付けはどうだ。妖精の名付けは、種族進化を促すと聞いたことがある」
「え!? マジ! あたしに名前つけてくれんの? 超ラッキーなんだけど!」
おいおい、スプライト。
嬉しさのあまり、キャラが変わってんぞ。
良し、労働力ゲット!
俺は、悪い笑みを浮かべた。
立ってる者は、親でも使えだ。
まぁ、父上を動かすことは絶対にないが。




