冒険者ルーク 45
時空転移したナイアーラトテップは、暗黒の空間の中に居た。
ここには、星明かりしかない。
白銀の男は、暗黒の玉座に腰掛けた人物の前に跪いた。
「して、奴の実力はどれほどのものであった?」
玉座の主のしわがれた声が空間内に響く。
「父なるアザトースよ。ルー・フーリンめの潜在能力は、邪神に匹敵するかと愚考します。事実、この私めにかすり傷をつけました」
「ほう。這い寄る混沌のそなたに傷をつけるとはな」
呵々大笑するアザトース。
彼を一言で言い表わすならば、異形であった。
その姿は無数の人骨と獣骨が混じり合い、生ける眼球で出来た衣服を身にまとっていた。もちろん、この姿は本物ではない。人型の方が会話がスムーズなので、この形態でいるだけだ。
「奴めは黒豹の獣人の姿に変化し、シュブ=ニグラトを撃破しました——」
「さすがよの。でなければ、この世界に喚んだ甲斐が無いというもの。何、反抗的な邪神は彼奴めに始末させておけば良い。それより、シュブ=ニグラトの核を回収したのであろう。魔界で悪魔をスパイしている、バフォメットに繋ぎを取ってみよ」
大悪魔バフォメットは、魔界の太守でありサバトの主催者で暗黒界クリフォトに住まう古代の魔神である。
黒山羊の姿に女性の上半身、そして下半身には双頭の蛇の男根を持つ。
彼はアスタロトと同じく両性具有の悪魔で、レオナールの産みの親でもあった。
黒猫王子の知らないところで、邪神らの侵略は着々と進んでいたのだった!




