冒険者ルーク 43
影狼でナイアーラトテップを裂いた感覚は、金属とも植物とも動物とも言えない感触だった。
さすがは、エクストラ・テレストリアル——地球外生命体と言ったところか。
そもそも、生命体ですらあるのだろうか?
人間界を勉強するために観た映画では、フレンドリーで愛嬌がある宇宙人で、自転車で空中遊泳するような、ほのぼのとした物語だったのだがな。
実際の宇宙生命体は、侵略者だったわけだが。
とりあえず、傷をつけられるということは、殺せるということ。
場合によっては、エクスカリバーやロンゴミアントなどの聖剣や神槍を用意しなければならないか。
ガルムが俺に残してくれた能力。
魔力の刃の影に、影狼を潜ませる攻撃を俺は薄刃影狼と命名。
まぁ、邪神のヘイトは稼げたか。
攻撃が俺に向けられている間は大丈夫だ。これが父上や部下に向けようものなら、俺の全力をもって邪神らを排除する。
ああ、父上は今頃どうしているだろうか?
ルーは、さびしいです。
〈マスターは、一人じゃないよ〉
〈リジルか。そうだな、俺は一人ではないな。お前らが居る〉
物思いに耽っていると、ナイアーラトテップが話し掛けて来た。
「今回は、これで失礼するよ。首を洗って待っているのだね」
ふいに、トラペゾヘドロンが巨大化し、ナイアーラトテップを飲み込んだ!
それきり、気配が消え失せた。
ほう、あの多面体は転移装置も兼ねるのか。大したテクノロジーだ。
まだ、人類はテラ・フォーミングさえ行えてないと言うのに。
テラ・フォーミングとは惑星地球化計画のことだ。例えば、火星などの地球に良く似た惑星に大量の植物などを植え、空気を増やし、人類が生存できる環境に改造すると言うものだ。
あるアニメでは、惑星の浄化のために幾万ものGを放流したが、進化した彼らは逆に人類の天敵となってしまった物語があったな。
宇宙空間を自在に飛来する邪神に、俺たち妖精は勝つことができるのか?
あるいは、天使や悪魔らと共闘することになるのだろうか?
分からん。
邪神の群勢の規模が、皆目分からない以上、判断しようがない。
それに、侵略がアイテールの世界のみとは限らない。
考えたくはないが、多次元侵略も視野に入れておいた方が良いだろう。
とりあえず、ティル・ナ・ノーグへの侵略だけは許さん。
父上と俺の愛すべき故郷。
邪神の手から守り抜いてやる!




