冒険者ルーク 42
先ほどのナイアーラトテップの槍撃は、影狼の存在がなければ、かわすのは難しかっただろう。
さて、俺は戦闘において、父上を見習ってクールであるよう努めているが、基本的に短気である。
売られたケンカは父上の見ていないところなら、なんぼでも買う。
お買い上げしちゃうのだ。
俺は、すかした白銀の長髪のイケメン——ナイアーラトテップ氏——に、飛燕斬をニ閃放つ。
魔力を斬撃にして、飛ばす剣技だがナイアーラトテップは、これを軽々とかわす——のは、想定の範囲内。狙いは——
ザシュ!
という音と共に、蒼い鮮血がナイアーラトテップの左頬から飛び散る。
その時、奴の顔が驚愕に彩られた。
種明かしをしよう。
俺は放った飛燕斬の影に影狼を潜らせ、まんまと奴を出し抜き、傷をつけたのだった。
俺がニヤリと笑うと、邪神ナイアーラトテップは醜悪に顔を歪めた。
「やってくれたね、下等生物如きが這い寄る混沌の王に傷をつけるとはね。百万年振りの痛み、心に刻んでおくよ」
ありゃりゃ、奴さん相当怒ってますな。
先に攻撃仕掛けたの、そっちやねんけど。
「旧支配者の七帝に宣戦布告だ。と言っても、シュブ=ニグラトを倒したから、後は貴様を含めて六帝か?」




