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冒険者ルーク 41

 痩せゆく男が居た。

 彼はヘリオス王国、王都ラスカーシア支部に所属する冒険者で、体重八十キロに及ぶ大剣使いだった。

 名を、ケンプ・ファーという。

 今も、冒険者御用達の宿屋兼酒場でオークの丸焼きを五人前平らげた所だ。

 だが、当に来てるはずの満腹感が得られない。胃袋には、まだ余力がある。

 筋肉質だった身体も、今は見る影もない。

 体重は半分以下まで、落ち込んでいる。

 ケンプは真っ先に呪われたと感じ、顔見知りの教会のシスターに解呪をお願いしたが呪いの痕跡はなく、冒険者ギルドにも相談し、原因を特定した者に百万ゼニス——日本ならば百万円——の報奨金を出すよう依頼したが、誰もこの難題のクエストを解ける者は皆無だった。

 かくて、それは塩漬け依頼となり、クエストボードの隅を飾るだけであった。

 だが、この日、ギルドを訪れた一人のハイエルフの冒険者がそのクエストの依頼票を無雑作に剥がした時、謎は解けることになる。




 ある少女が粗末な簡易ベッドの上で、呼吸器系の病気と闘っていた。

 少女シエルは十二歳で、兄のラルクと姉のアンナが代わりばんこで看病をしている。

 今日も朝から、喘息ぜんそくの発作が出ており、息苦しい症状が続いている。

 呼吸困難で死者が出てしまう病気でもあるため、特に発作時には目が離せない。

 少女は兄弟の看病の負担を減らすために、常に死を望んでいた。

 彼女が死ねば、生活はかなり楽になる。

 もう、足手まといは嫌だった。

 残される兄と姉の気持ちも考慮するが、精神的に限界だった。

 死ぬ勇気が出ない。

 当然だ。

 まだ、彼女は幼いのだから。

 朦朧とする意識の中、シエルは一匹の黒猫の幻覚を見た。

 その猫はエメラルドグリーンの瞳をしていて、シエルの額にキスをした。

 すると、彼女の細胞は正常に動き出し、呼吸が楽になった。

 その夢が本当なら良いのにな、とシエルは思った。そこで、少女の意識は途絶えたのだった。




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