冒険者ルーク 21
ガルムの意図は理解した。
こいつは事故に見せかけて、俺の攻撃を邪神に当てるよう誘導したいのだ。
俺は飛燕斬を乱舞し、多方面からの攻撃を試みる。
ガルムが回避した先には、シュブ=ニグラトが居るという筋書きだ。
洗脳されたケルベロス軍団を、黒山羊が捨て駒にしようとするが、それをガルムの影が防ぐ。
ガルムとの共闘を見破ったシュブ=ニグラトが、奇妙な雄叫びを上げ、身体中から幾千もの触手を伸ばし、近くに居たケルベロスらを捕食して行く。
邪神の触手は様々な捕食者の頭部と化し、ケルベロスを咀嚼する。その形態は実に様々で、ワニや獅子や蛇や鷲などの姿だった。
体長一メートル前後だった邪神が、捕食の度に大きくなって行く。
俺とガルムはシュブの触手を斬り刻むが、追いつかずにケルベロスらは捕食されまくって行く。
不味いな。
このままじゃあ、ジリ貧だ。
直接、シュブ=ニグラトを叩くにも触手が邪魔で動けない。
さらに斬った先から、触手が再生して行く。
さらに、邪神の魔力が増大して行く。
こうなれば、広範囲の雷撃魔法を展開して邪神を麻痺させて一気に叩くしかないだろう。
アイテールの世界の大気が、どこまで俺に力を貸してくれるか分からぬがやらないという選択肢はない。
俺は慈愛の王、クー・フーリンの息子なのだから。
邪神を倒して、ガルムをフェンリルの元に返す。
そのために、俺はこの世界に呼ばれたのだろうから。




