冒険者ルーク 18
結果的にルー・フーリンは、リジルを強化できてインテリジェンス・ウエポンへと生まれ変わらせた。気を取り直したルーは、フェンリルの分身と共に邪神の棲家へと向かう。
辿り着いた先は山の中腹で、枯れた樹々が散見される場所だった。
邪神シュブ=ニグラトは禍々しい視線を、ハイエルフの剣士に送っている。彼女の両側にはケルベロスの群れがおり、牙を剥き出しにし威嚇している。
その群れの中から、のそりと闇堕ちしたガルムが立ち塞がるように、ルー・フーリンの眼前に現れた。
七、八メートルはあろう漆黒の巨獣は、紅く燃える目で黒狼の剣士をにらむ。
ケルベロスで邪神の精神汚染に掛かっている者は、どうやら漆黒の体毛と紅眼とを有しているようだった。中には、白や銀や蒼などの体毛もいる。彼らは、まだ精神汚染が進んでいないのだろう。だが、邪神の手先となるのは時間の問題だ。
精神汚染の進行速度は個体差もあろうが、ガルムは手遅れだろう。
それに、これだけのケルベロスに襲撃されたら、手加減などできようはずもない。
(救える生命があるなら、救いたかったがこの現状では無理だろうな。それに、あの黒山羊の邪神の能力も未知数だ。それとも、邪神さえ倒せばガルムらは解放されるのか? 分からん。臨機応変に動くしかないか)
ルーの胸中には、複雑な思いが渦巻いていた。




