冒険者ルーク 13
『ルー・フーリン殿のお察しの通り、奴は我の番いでした。ですが、邪神に意識を乗っ取られ、我にまで牙を剥いてくる始末。仔らを邪神の手から守るためにも、ガルムを何とかせねばならぬでしょう……』
フェンリルの覚悟に、ルー・フーリンもすべきことを決める。
「なるべくなら、洗脳を解く方向で行くが、それがかなわぬなら、ガルムを殺す。それで良いな?」
努めて、冷静にルーは言った。
番人であるフェンリルには、この神域を守る使命がある。それを乱す存在ならば、例え番いであろうとも排除しなければならない。
(かつての夫を殺すのだ。容易く割り切れるものでなないだろう。この俺が葬ってやるのが、せめてもの情けか……)
これが父、クー・フーリンを葬れという依頼ならば、ルー・フーリンは断固拒否しただろう。
父であるクー・フーリンを救うためなら、この生命を千回だって投げ捨てる覚悟はある。
ただ一人の肉親であり、妖精界ティル・ナ・ノーグの王。
類まれなる戦士にして、無償の愛を注いでくれる父親。
何より、ルー・フーリン自身が武芸の達人であり、良き統治者であるクー・フーリンを敬愛――いや、狂愛している。
ゆえに、この番いが不憫でならない。
ルーは邪神の手先となったガルムらを確実に、殲滅するだろう。
例え、全世界に恨まれようとも、父さえ理解者であれば良い。
ルー・フーリンは、そう黙考するのだった。




