冒険者ルーク 11
治癒魔法が発動する。
暖かなグリーンの光がフェンリルを包み込み、患部に当たると瞬く間に裂傷が姿を消した。
「グ、ム……」
ディアン・ケヒトの魔法は、身重だったフェンリルに分娩を促す。
面倒見の良いルー・フーリンは、そのままフェンリルが出産しやすいよう、痛みを軽減する魔法を掛ける。
ほどなくして、母フェンリルは五匹の仔を産み落とした。
名前は取り上げたルー・フーリンが付けた。
ロムルス、レムス、スコル、ハティ、ゼルムの五匹だ。
なるべく、狼っぽい名をチョイスした。
これが、イルダならば「このチョイス、超良いッス」とダジャレをかましたことだろう。
最後に産まれてきたゼルムは、金毛のケルベロスの姿をしていた。
これは、神獣マーナガルムの特徴である。
ルーは、ハッとなった。
「まさか、敵のガルムは貴様の番いなのか!?」
神獣マーナガルムは邪神へと下り、ダークガルムに変貌した。
フェンリルは愛した夫の討伐を頼んだのである。それは、苦渋の決断だったのだろう。
ルー・フーリンは、フェンリルに憐れみの視線を向け、どうしたものかと溜め息をついた。
でき得るならば助けたいが、それは邪神の精神汚染がどこまで侵食しているかによるだろう。
まったく、面倒なことをアイテールに頼まれたものだ。




