アブディエルの野望 21
サンダルフォンの雷撃を捌きながら、アブディエルは部下二人の死を冷徹な目で見ていた。
司令官であるアブディエルを放置し、犬死にした。どうせなら、サンダルフォンに殺させて態勢を整える時間稼ぎの材料に使えたものを。
それにしても、眼前の雷帝竜は馬鹿の一つ覚えのように、雷撃のブレスを放って来る。
やはり、堕天した影響で狂ってしまったのだろうか。
もう、一万回は雷撃を斬り伏せただろうか。
アブディエルにも、疲労の色が見える。
「私の体力が切れるのを待っているのか?」
アブディエルが、そうつぶやいた刹那――
時間が止まった!
イルルヤンカシュがニヤリと笑う。
「身体が動……か、ない……」
やられた!
単純なブレス攻撃では、なかった。
雷撃によるダメージを蓄積させ、アブディエルをパラライズ状態へと誘導したのだ。
全身が麻痺で、思うように動けない。
辛うじて、羽根は動くがホバリング状態で、宙に留まるのがやっとだ。
黄金の竜は、おもむろに口を開くとアブディエルの方へと近づいて来る。
恐怖と驚愕が、アブディエルを襲う!
「や、止め……ろ!!」
そのまま、アブディエルは生きながらドラゴンに咀嚼された。
こうして、アブディエルの野望は終えたのだった。




