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運命の女神

 彼女は運命神の玉座に座りながら、溜め息をついていた。

 ここは異界アヴァロンと呼ばれる神域である。

 これまで、運命を司どっていたノルンの三姉妹は、同じ運命の女神であるフォルトゥナに、その権能を委譲した。彼女らが運命神を辞退したのは、黒猫王子の未来を予測することさえ、できなくなっていたからだ。

 女神としての矜持が、その地位に留まることを許さず、彼女らは運命神の座を下りた。

 新たにフォルトゥナは、大いなる女神となったが彼女自身は、それを望んでいなかった。

 運命という特殊な概念を扱うだけあって、誰にでも適性があるわけではない。

 彼女は蒼く、短い髪と銀青色という瞳の持ち主だった。ギリシャ風の白いドレスで随所に銀の鎖を散りばめたアクセサリーに身を包んでいた。

 右手には、運命の方向性を定める銀環の錫杖が握られており、目の前には転生を待つ黄金と銀の魂の炎が浮かんでいる。

 転生も特殊な枠組みの中で機能している。

 つまり、過去・現在・未来の拘束を受けない。

 転生先は未来ではなく、過去へと転生する場合もある。

 移界と同じで、相応しき運命を辿れるよう世界や時空の強制力を受けるのだ。

 ルー・フーリン自体が運命という概念そのものなので、彼の生き方がそのまま運命として紡がれるのだった。

 バルディエルとレリエルの魂は、女神フォルトゥナの采配を待つ。

 添い遂げられなかった二つの魂を見て、フォルトゥナはまたもや溜め息をついた。








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