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アブディエルの野望 19
「がぁっ!!」
「バルディ! もう、よせ。充分だ。お前だけでも逃げろ!」
レリエルの悲痛な叫びが、死の雪原に吸い込まれて行く。
バルディエルは苦痛に耐えながら、竜牙兵を蹴り飛ばし、喉元に一突き見舞うとスケルトンは塵となった。
「いやだね! お前は俺の背中に守られてりゃ良いんだよ……」
「お前にもう、これ以上、傷ついて欲しくないんだ。頼むから、アブディエル様と合流してくれ!」
涙を流しながら、レリエルは恋人に訴えかける。
そうしている内にも、新たに竜牙兵が迫って来る。疲れを知らないというアドバンテージが、徐々に効力を出し始めていた。
バルディエルは、ここにいない神へと祈った。
せめて、レリエルだけは救けて欲しいと。




