アブディエルの野望 9
黄金の竜の双眸が見開かれ、それに呼応するかのように雷雲が集って行く。
アブディエルの引き連れて来た天使らの中には、雷光の天使・バルディエルの姿もあった。雷属性の天使に、雷撃はさほど効くものではない。その上、アブディエルが集めた天使たちは戦闘のエキスパートばかりだ。
闇魔法が得意な、夜の天使・レリエルが周囲の霧を霧散させ、視界を確保する。
サンダルフォンは全長十二メートルは、あろうかという巨体だ。
『滅ブガヨイ!』
広範囲の雷撃魔法が、イルルヤンカシュから放たれる。
無数の稲妻が竜と化し、精鋭の天使たちに牙を剥く。
アブディエルは雷撃を回避したが、バルディエルを除く天使らは稲妻が直撃し、麻痺状態となる。
痙攣し、白目を剥く天使たち。
「おのれ、サンダルフォン! 我が部下たちを傷つけおったな。死にぞこないめ、引導を渡してくれる!」
アブディエルがドラゴンの正面へと移動し、聖剣を抜き放つ。
せっかく手に入れた手駒を、むざむざ殺されてはたまらない。まだまだ利用価値がある彼らには、アブディエルのために働いてもらわなければ。
サンダルフォンをテイムできるのならば、その方が良いが。
とにかく、アブディエルの国盗りは始まったばかりだ。
利用できるものは、何でも使う。
そして、神・アドナイに取って代わるのだ!




