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アブディエルの野望 7
『ココカラ タチ去レ!』
ふいに、アブディエル隊の全員に、何者かからの念話が送られた。
正面の霧が揺らぎ、巨大な黄金の竜が天使らの前に、その姿を現した。長大な蛇体の竜で、炎帝竜ファイヤードレイクを彷彿とさせる。
「まさか、雷帝竜イルルヤンカシュなのか――」
神話の時代、ヒッタイト帝国で猛威を奮ったエンシェント・ドラゴン。それが、イルルヤンカシュという黄金の竜であった。
『去ラナケレバ 我ハ 貴様ラヲ 殺シテシマウダロウ』
もとより、アブディエルは竜を討伐するつもりで、ゲートを潜ったのだが、このドラゴンの忠告は想定外だった。
油断させて、一網打尽にする気だろうか。いや、それならば問答無用で襲って来るはずである。
竜の奇妙な言動は、アブディエルの興味を引いた。堕天する前のドラゴンの正体に、アブディエルは思いを巡らせたのだった。




