一週間前の出来事 15
ギョッと、なったのはグラーシャ・ラボラスである。本体は、尻尾の蛇に核を隠しているので安心していた悪魔だが、京子に弱点を言い当てられ焦りまくる。
(バカな! 擬態は完璧だったはずだ?)
思い通りに行かないのが人生である。
黒猫が獲物を捕らえる眼で、縮地を展開させる。
一瞬で蛇ラボラスに肉薄し、尻尾を斬り落とす。
間髪入れずルーは、フラガラッハをしまい込み、蛇の頭部を握り込む。
「ギャアアア!」
苦悶の表情を浮かべる蛇。
猫の手では拘束できないので、黒猫は鎖を出す魔法で、ラボラスを締めつけた。
「ようやく会えたな、ラボラス卿!」
京子の指摘は的確だった。
やはり、彼女は妖精眼なのだろう。
しかし、不思議である。
今の今まで、京子という存在を忘れていたのだ。
妖魔や悪魔との戦闘に巻き込まれる割には、存在感を感じない。
京子は歪な存在だった。
これも妖精眼の影響なのだろうか。
とりあえず、黒猫はグラーシャ・ラボラスから、情報を引き出せるよう尋問することにした。
「さて、ラボラス卿――誰の命令で人間界に来た!?」
「……知らぬな」
「――俺の調べで、黒幕はバールゼフォンだということがはっきりしている!」
(というか、グラーシャ・ラボラスが語るに落ちただけだがな)
苦笑しながら、ルー。
「何いっ! 妖精のくせに何という情報収集力!?」
黒猫は笑いをこらえるのに必死だ。




