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弓聖の救世主 13
「これはこれは、ぶしつけな真夜中の侵入者よ。焚き火にあたりに来たか――それとも、私と一戦、交えに来たか」
マンティコアは、肉食で気性が荒い。
その上、マン・イーターの二つ名を持つ、人間とエルフの天敵であった。
若干ながら、人族もティル・ナ・ノーグに住んでいる。これは人間界からの迷い人が大半を占めていた。
ガオオーン!
上位捕食者が咆哮する。
威圧を伴ったそれは、イルダに恐怖の念を抱かせる。
「ヒッ! アタシは、美味しくないっスよ!」
「丁度よい。マンティコアの弓での単独討伐を見せてやろう」
ニヤリと美髯の悪魔は笑った。
おもむろに、マンティコアが近づいて来る。
その背には、コウモリが如き、四枚の翼があった。
「フッ、特殊個体か。面白い。ただのマンティコアでは、つまらぬからな。さぁ、マンティコア――狩りの時間だ。用意は良いか」
矢をつがえたバルバトスに、マンティコアは威嚇の咆哮を森全体に轟かせるのだった。




