幕間――迷子の迷子の、仔竜ちゃん? 3
「総員戦闘用意!」
レイナルは落ち着いて、指示を出す。
各々が得意とする武器や魔法を行使できる状態にする。レッドキャップが幾ら戦闘的な種族としても、過剰戦力である。
しかし、このレッドキャップは何か普通ではない感じがする。
本来のレッドキャップなら、敵を視界に入れた時点で襲撃してくるのが普通だ。
だが、この赤帽子はまるで、妖精騎士団の戦闘準備が整うまで、待っているようだった。
「オメーら、悪いことは言わねーから、こっから立ち去んな。でないと、痛い目見るだぞ?」
ご丁寧に赤帽子は、退却するよう忠告してくる。
見ると、背中には見事なバトルアックスが装備されていた。
甘く見られたレイナルたちは、レッドキャップをにらみつける。
シルフのエルアフィーヌが仲間に目配せし、風刃の魔法を発動させる。
「ミンチになりなさい。エアカッター!」
グフに風の刃が迫る。
慌てず騒がず、赤帽子は戦斧を一振りすると、シルフの攻撃を相殺した。
「嘘っ! あのバトルアックス――風の精霊の加護を持ってる!?」
エルアフィーヌを驚愕が襲った。
次期、風の精霊女王候補の一人であるエルアフィーヌの攻撃を無効化したのだ。その上、武器には加護まで付いている。
本来、精霊の加護は王であるエンリュミオンの血族か、資格を受け継いだ者にしか与えることができない。ましてや、邪悪な妖精レッドキャップが、その恩恵に預かるはずもない。
何かがおかしい。
このレッドキャップが特殊個体だとしても、武器に加護を付与する理由にはならない。
精霊が加護を与えるのは、愛し子と呼ばれる存在だけである。
偶然、加護つきの武器を拾ったとしても、恩恵が発動するのは愛し子のみなので、レッドキャップが攻撃を相殺した謎が残る。
まさか、この赤帽子自身が、精霊の愛し子なのか?
ありえない!
エルアフィーヌは、頭に浮かんだ考えを否定した。
「レッドキャップ如きが、舐めやがって!」
レイナルが剣を抜いて、グフへと斬りかかる。背後からはリュカオンが長槍を放つ。
レッドキャップは後ろに目があるかのように、リュカオンの突きを左脇に挟み込み、穂先を折った。と、同時にレイナルの剣身を戦斧で切断する。
レッドキャップには、ありえない戦闘のセンスに妖精騎士団は驚きを隠せずにいた。
「まだ、やるけ?」
異常な強さを見せたレッドキャップのグフに、騎士団の面々は警戒度を引き上げるのだった。
レイナルの見た目を書いてなかったので、仔竜ちゃん? 2に
書き足しております。
m(_ _)m
今日は、中西圭三の 眠れぬ想いを聴きたい気分。




