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弓聖の救世主 6
バルバトスは、やや本気になっていた。
「ツノウサギ如きが、調子に乗りおって」
狩人の悪魔は全神経を集中し、スキルであるイーグル・アイを発動させる。この能力は鷲の視点で全体を俯瞰できるホーク・アイの上位スキルであった。
ジャッカロープの挙動に合わせ、先読みの矢を射る。
ドシュ!
手応えを感じたバルバトスだったが、すぐさま警戒モードへと入る。
射手は、もう一人居たのだ。
おもむろに、バルバトスは仕留めたジャッカロープへと近づいて行く。
反対方向からは、エルフの少女イルダが歩いてくる。
至近距離になり、イルダが開口一番――
「このジャッカロープは、アタシの獲物っス!」
目の前のジャッカロープの脳天には、矢が刺さっている。言わずと知れたバルバトスのものだ。対してイルダの矢は、ツノウサギの左足をかすめただけ。
「話にならんな」
呆れた口調で、バルバトスが肩をすくめる。
血抜きをするために狩人は、小さなナイフを取り出す。
「待つっス! アタシにもジャッカロープを食べる権利があるっス」
涙目のイルダに、面倒くさいことになったとバルバトスは嘆息した。




