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弓聖の救世主
封印の解けたリンドブルムは、狩人の悪魔バルバトスに向け、攻撃を放った。
その場には、黒猫王子ルー・フーリンやサブナックにカイイリエルにエディンまで居たが、邪竜の強大な攻撃は時間と空間さえ、捻じ曲げてしまうものだった。
気がつけば、バルバトスは知らない場所へと飛ばされていた。いや、知ってはいたが、空気が違うと感じる場所であった。
ティル・ナ・ノーグであって、ティル・ナ・ノーグではない場所――そう、直感的にバルバトスは感じた。
そこは森の拓けた場所であった。
仰向けの状態だったバルバトスは、自身の体調などを確かめる。
身体は思うように動く。
グリフォンの皮から作られた狩人の衣装にも、問題はない。
背中に負った剛弓アンフィスバエナに、矢筒にも欠品はない。
先ほどの攻撃は、時空さえ振動させるものだったとバルバトスの勘が、そう告げている。
どうやら、狩人の悪魔は過去か未来のティル・ナ・ノーグに飛ばされたらしかった。




