ゲイ・ボルグ 7
白粉彫りというタトゥーがある。
体温が上昇した時に、浮かび上がる特殊な彫り方で、マナナンは全身に千を越える魔法陣を白粉彫りにしているのだった。
常時発動しているパッシブな魔法陣もあれば、使われないものもある。
これはアスタロトの指にも、施されているものだ。彼女は指をこすり合わせることで、魔法を発動させる。
アスタロトの場合は、蛇の能力に特化したものを好む傾向がある。
「妖精界の英雄王の実力は、そんなものではないはずだ。さあ、わしの攻撃魔法を凌駕する槍撃を見せてみよ!」
マナナンの五本指から炎・水・土・氷・雷属性の魔法弾が、クー・フーリン目がけ放たれる!
これがマナナン・マクリールが魔道王と言われる所以である。相性の悪い魔法属性を同時発動させることを、得意としているのだ。
クー・フーリンもマナナン相手に、本気になることを決め、風魔法をゲイ・ジャルクの切っ先に付与し、すべての魔法弾を斬り、突き、捌いた。攻撃魔法の余波は、回避し、彼には傷一つ見当たらなかった。
「さすが、クーの旦那! 見事な槍捌きでやんすね!」
イルサンは、クー・フーリンの槍技に大はしゃぎだ。
その時、妖精王の背中に魔法弾が着弾し、クー・フーリンは前のめりになった。
「ほほっ、簡単な魔法陣なら足でも書けるでな。ついでに追尾と透明化の付与のおまけ付きよ。クー・フーリン殿、気に入ってもらえたかな?」
ニヤリとマナナンが笑う。
妖精王は気を引き締め、次の攻撃に備える。
「クソッ、さすがにマンナン殿も手強い」
イルサンは無視された腹いせに、マナナンのことをマンナンと呼んでいた。
どうやら、マナナンとの戦いは一筋縄では行かないようだ、とクー・フーリンは思った。




