ゲイ・ボルグ 6
模擬戦の舞台は、闘宮と呼ぶ場所で行なわれることとなった。
光る石畳みはミスリルとオリハルコンの合金で造られ、中央には蒼い魔法陣がある。これには地盤強化や衝撃吸収や魔法相殺の術式が、綿密に組み込まれている。古竜クラスが暴れても丈夫な造りだ。
ルールは相手に致命傷を与えるほどのダメージを一撃喰らわせるというものだった。瀕死の重症でも、マナナンの治癒魔法、妖精の治癒魔法、保険にエリクサーと準備は万全だ。
二十メートルほどの間合いから、戦闘開始の合図があった。
今回は出番のない、イルサンが審判役を務める。
クー・フーリンは愛槍ゲイ・ジャルクを頭上で回し、いつでも突撃できる体勢を取る。
マナナンの魔法を警戒してか、うかつには飛び込まない。
逆に、マナナンに懐に入られたなら、槍が取り回しできず、攻撃を仕掛けられない。その時は、体術で相手を制圧しなければならないだろう。
まずは、様子見である。
魔道師マナナンは、人差し指に火を灯すと小さなファイヤーボールを放つ。
即座にクーは、火球を切り捨てる。
「ふむ。やはり、このぐらいでは仕留められぬか」
(からかって、いるのか?)
気を取り直して、妖精王は距離をつめ、必殺の突きを見舞う。
またもや、小さなファイヤーボールが放たれ、クー・フーリンは切っ先で、それを払う。
刹那――八匹の竜と化した火球が、あらゆる角度から妖精王に襲いかかる。
クー・フーリンはゲイ・ジャルクを、一閃、二閃と振るい、火球を叩き落とす。
が、最後の火球はクー・フーリンの足をかすめ、小さな火傷を負ってしまう。
「ほほっ、反応速度は及第点よの」
ニヤリとマナナン・マクリールが笑う。
即座にクー・フーリンは治癒魔法のキアンを発動し、火傷を治す。
「ほう、それが妖精の治癒魔法――実に、興味深い!」
この時、クー・フーリンは冷や冷やしていた。
妖精の治癒魔法を教えるとはいえ、使えるかどうかは分かっていなかったからだ。




