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幕間――奪いし者、奪われし者 26
ベルゼビュートらが去って、ほどなくして目を覚ましたグフ。
そこには、最悪の光景が広がっていた。
心臓を貫かれ、息絶えたガルフォン。
その双眸には、死者特有の暗い翳りがあった。だが、表情は満足げで、最後にグフを守れた安堵の顔をしている。
「あああああ……」
グフの目から大粒の涙が伝い落ちる。
さっきまで、生きていたのに……。
さっきまで、動いて、息をしていたのに……。
さっきまで、グフを守っていたのに……。
もう、ガルフォンの魂はティル・ナ・ノーグを去ってしまった。
グフが世界中のどこを探そうとも、優しかった祖父はいない。
「ジイちゃん、ジイちゃん、ジイちゃん……ゴメンよ。オラが弱かったばかりに、ジイちゃんを守れなかっただ……」
泣きながらグフは、祖父から流れ落ちる血で帽子と衣服を赤く染めてゆく。
ベルゼビュートへの復讐の念を抱きながら、帽子で血を拭う。
「ベルゼビュート……ヤツを絶対に殺すだ!!」
こうして、特殊個体のレッドキャップがティル・ナ・ノーグに生まれたのだった。




