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アブディエルの野望 3

 

「待たれよ、アブディエル殿!?」


 その言葉を発したのは、天界の書記長ラジエルであった。


「何か用か、ラジエル!?」


 アブディエルは、ラジエルを一瞥する。

 黄金色の長髪に銀の瞳。そして、眼鏡を掛け、片手には辞書を携えている。


「ここに集った天使らは、なにゆえにここに居る!? もしや、謀反を起こす気ではあるまいな?」


 ルシフェルの堕天後、謀反を企む天使らも数名いたが、いずれもカイイリエルや裁天使らに計画を阻まれた。中には、異界へと幽閉された仲間もいる。


「だったら、どうだと言うのだ」


「愚かな、熾天使副長ともあろう者が……」


 アブディエルは呵々大笑し、ラジエルを嘲った。


「愚か者は、神である! もう、長いこと神が不在であることは皆、知っている。惑星管理官である神の不在は、天界を見捨てたと同義。さらに、メタトロンの失踪に、七大天使の離席――悪魔との決着もついておらず、神は姿さえ現さない。責任を放置した神は、指導者の器に非ず! ゆえに、本日を持って、我、アブディエルが天界を統治する。これは謀反ではない。来たるべき、悪魔との最終決戦において、我が神罰の代行者として天界を取りまとめる。異存はないな、皆!」










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