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アンドラス 2
死期を悟った人物だけが見る死神。
アントワネットには、フクロウの頭部を持つ悪魔の姿が視認できていた。
死神では、ないのだろう。
なぜなら、フードを被ったガイコツではないし、処刑鎌を携えていない。
それでは、あの者の正体は悪魔なのであろう。悪魔は死後の魂と引き換えに、願いを叶える存在だと言う。
ならば、取り引きを持ちかけるまで。
「悪魔よ。そなたと取り引きがしたい」
刑吏にバレぬよう、アントワネットは口を動かす。
彼が悪魔ならば、読唇術など容易いはずだ。
『へぇ、稀代の悪女が、このアンドラスに何の用だい?』
王妃の脳に、アンドラスが語りかけた。




