394/632
少年バエル 14
「かの魔神と相対するには、いささか戦力不足であろうな」
凜とした声がフロッシュから放たれる。
「起きたのかい、ツァトゥグァ!?」
フロッシュの身体が赤く変色し、頭部には耳のような突起が現れ、全身には体毛があった。
邪神ツァトゥグァの依り代として、フロッシュは召喚された。彼自身も、かつての邪神の能力を失っているので、本来の力を取り戻すまで、使い魔の中で眠りについていたのだ。
「これしきの死骸では、アトラク=ナクアのエサにもならんな」
バエルの使役するクモは、ツァトゥグァの従属神でもあった。
そして、使い魔の黒猫アイルーロスも只の魔法生物ではない。猫頭の女神バステトが堕天して、魔獣へと変わり果てた姿であった。
これがバエルの自信の裏付けでもある。
邪神二人と、堕神が一人。
最強のカードは、バエルの手の内であった。




