雷火の爪撃 6
踵を返すルキフェルを呼び止める声があった。
「臆したか、ルキフェル!」
ピクリとルキフェルのこめかみが動いた。
彼を呼び止めたのは、魔道師の杖を持つ、悪魔ルキフグであった。
ルキフグは死霊術の使い手で、参謀のスキルを持っている。むろん、この一万の軍勢を扇動したのも彼である。
同じ魔道具使いではあるが、死霊術と強力な武器を有した者では、前者に軍配が上がる。
「貴様ら如き、エリゴールとベリスで充分だ」
「ククク、やはり、貴殿はドール・バシュなしでは魔王衆最弱のようだな」
ルキフグは、骸骨のような見た目に一対の小さな角と山羊の蹄を有した悪魔である。ネクロマンサーとしての腕は優秀で、一度に千体ものスケルトンを操ることが出来、この軍勢の中に紛れ込ませている。
「フム、小者に舐められるのは癪に触るな。良かろう、ルキフグ。その安い挑発に乗ってやる。後悔するなよ」
ルキフェルの射抜くような眼光が、高台の下のルキフグを捉えた。その眼は、絶対的な捕食者のものであり、強者の余裕を讃えていた。
一瞬、ルキフグの背筋が凍ったが、一万の軍勢が味方であるのを思い出し、薄く笑った。何が魔界四大実力者か。そんな戯言は、ドール・バシュなしで、この状況を切り抜けてから語るが良い。
「それは、そちらの方であろう。いかな魔王衆とて、一万の軍勢には叶うまい!」




